師長であるあなたはどうしますか?


ある病院の看護部長を担っていた時のことです。
例年、数人の師長の入れ替えがあり、毎回の師長会議ではその都度現状の問題や課題、取り組み内容を全員で確認し合っていました。
なぜか、他施設から新たにメンバーになった師長はあまり発言しません。郷に入ったら郷に従えというのでしょうか、良くも悪くも右に倣えの風潮が根強くたなびいていました。

ある会議で、新しい師長に「ここがおかしい」「あれ?これでいいのかな?」と思うことがあれば遠慮なく出してほしいと促しました。すると「ある病棟で、夜の消灯時間になると突然室内灯が消えるので、就眠前のストマケアをしている患者さまが気の毒だった」と。
状況を調べてみると、自動タイマーで室内灯の消灯がセットされているようでした。それにしても、大腸がんに侵され人工肛門をつくった患者さまが、慣れない手つきで眠前のケアをしている最中に、突然電気が消える状況を誰も気にならなかったのでしょうか?

勤務が長くなると、周りがあまり見えなくなります。気づく力が弱体化してしまうのです。そして「以前からそうだったから」「病院のシステムだから仕方ない」といいます。私はこの案件を師長たちに問いかけました。
「本当にそれでいいのか?」「患者一人ひとりの安眠を促すケアが行われていない状況を放置していいのか?」と。すると、その病棟を管理する師長から「夜勤の看護師は2人だけです。とても一人ひとりの状況を確認するなどできません。術後や重症患者の対応で精一杯です」との返答がありました。

翌日、私は日勤を終え、ふたたび消灯前後の時間帯にひそかに確認に行きました。すると病棟は何だかざわついて、本当に危険な状況が目に入ってきました。「もっと計画的に一人ひとりの表情を見て確認したのち、消灯スイッチを手動で押せないものか」私は引き下がりませんでした。それでも師長らの反応は同じであり、新しい師長は意見を言わなくなりました。
「では一度スタッフに持ちかけ病棟として意見をまとめて来るように」と指示をして一週間が経ったころ、あれだけ反論していた師長から「スタッフが、以前は全室の巡視を終えてから手動で消灯していたので出来ると言うんです・・・」と。まぁ何ということでしょう。ここまで来るのに三週間を要しました。

師長たちの考えの背景には「二人しかいないのに負担をかけたくない」「嫌われたくない」「スタッフを守りたい」さまざまな因子があったのでしょうが、自分たちがめざす本質的な看護からどんどん遠ざかる状況を招いていると痛感しました。
何が師長たちをそうさせているのでしょう?
師長という役割に自信が持てないまま、日々の業務に追われて、一つ一つの事象に立ち止まって掘り下げて考えないまま自尊心を失ってゆく。周囲の状況に流され、トップダウンの指示に終始して、目の前の患者の状況に目を配ることさえおぼつかなくなる…。そんなことが要因でしょうか。

師長とは、どんな状況でも己を見失うことなく、より良い看護を追求し続けることが役割です。考え方がいつもブレる師長のもとでは部下の不満や不信感が募り、意思疎通が図れずに個人プレーになってしまい、それが医療事故につながります。師長自身がまず自分はどんな看護を目指しているのか?その根拠は何なのかを、強い信念と情熱を持って貫き通す決意が必要です。

はじめから自信のある師長はいませんよ。「自信があります」という方の方が危険であり、自分に不足しているものを明確にして補おうという姿勢を持つことが重要なのですね。
さてみなさんは、毎日患者や家族のことを、より良い看護のことを、スタッフと充分に話し合っていますか?!

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