院内感染防止対策「100の理論より1つの実行」


多くの施設では、院内感染に関する教育研修・院内会議・サーベイランス・リンクナースの配置など、数多くの取り組みがなされているはずです。そして感染管理専門看護師や認定看護師なども配置され、組織横断的に活躍されていると思います。
1995年に認定看護師資格制度が発足し、すでに390名以上の認定看護師が登録されているようです。また2006年の診療報酬改定では、院内感染防止対策が入院基本料の算定要件に組み込まれてきた経緯があります。

しかし、大小の規模にかかわらず、未だに院内感染のアウトブレイクや、それに関連する重要な事象が発生しています。なぜなのでしょうか?
それは、表題にあります「100の理論より1つの実行」が重要であることを物語っているのではないかと思います。

看護助手さんやヘルパーさんは、私たちの看護業務を心強く支えてくれています。
しかし、彼女らは院内感染についても専門の知識は備えてはいないのです。いるとしても、それは一部の方に限られている状況にあるのです。

ある施設に赴任した時のこと、ここ2年に渡って、ある菌の院内感染がブレイクしているところでした。院内感染管理者の資格を有するトップが在職していたにもかかわらずです。
病棟には、マニュアルも手順書も、それは立派なものが備えてありましたが、あまり活用されていない様子でした。

早速私は現場をよ~く見ることにしました。すると排泄ケアをしているスタッフは、おむつ交換の時に使用した、汚染されたゴム手袋のまま、周囲のカーテンやワゴン車の取手、ベッド柵やドアノブなどに、次々と触れています。それを注意する看護師も、その場にはいませんでした。そして次の患者さんの処置に向かう時も、その手袋を交換しないのです。

彼女らは、無資格の看護助手の方だったのです。彼女らは何故か、暗黙の了解で排泄ケアを主な業務とされ、院内研修の対象にも入っていなかったのです。
ブレイクの原因がよく理解できました。
ただちにこの業務は専門知識を持つ有資格者と看護助手のペアによって実施する体制をとるとともに、無資格者を対象とした教育研修を実施しました。内容は「座学」ではなく、具体的な行為を1つ1つ実践する形とし、そのポイントは身体を使って体得するものにしました。

これらの改善策を中心に、自分たちが実践する地病院の感染防止対策マニュアルを作成することにしました。自部署の構造上の具体的な場面で、自分たちがモデルになってその防止策の実際を写真に納め、整理して行きました。自分たちが作成することと、どこかのマニュアルをそのまま備えることでは、その意義はずいぶん異なります。
1つ1つの項目について、疑問に思ったり、さらに新しい方法が見つかったり、より効果的だと思える方法があったりしたら、誰もが遠慮せず、ワイワイガヤガヤ話し合いながら赤ペンで書き込むことにしています。
どれほど活用しているかを見極めたいと思い、(冗談で)手あかが活用のバロメーターになるといって、表紙は真っ白にしました。しばらくして各部署を覗きに行くと、たくさんの付箋が貼られていました。そして1年に1度、この赤ペン箇所を修正し、見直すことにしました。

医療監視などで管轄の保健所の担当者から「非常によく出来ている」とお褒めの言葉をいただくと、スタッフのモチベーションはさらに高まります。
そして取り組みを始めて以来、院内感染のブレイクは一度もありませんでした。

私はこの施設を離れましたが、その後、1年を経過しても院内感染のブレイクは起こっていないようです。先日1人のノロウイルス患者の入院があったようですが、その1人のみで周囲への感染は見られず見事に抑制できたそうです。素晴らしい!!

管理はすべて、現場をよく見ることから始まります。
認定看護師等の活動によって、いつの間にか看護師長さんの頭の中に「認定看護師がやってくれるから・・・」という責任逃れのような思いが行ったり来たりしていませんか?
院内感染対策では、年2回の全職種を含む教育研修が義務付けられていますが、そのほとんどが座学であり、それでは限界があるのです。現場のスタッフの行動を観察し、スタッフ全員で取り組むことが大切です。

とにかく現場です!「100の理論より1つの実行」です。

院内感染防止対策「100の理論より1つの実行」」への1件のフィードバック

  1.  「現場をよくみて実行」何が問題なのか?意識してみていかなければ何も変わらない。塩谷部長によく言われた言葉を思い出しました。今当院も感染のリスクの高い病棟があります。現場をよく視るそして改善するための実践、ブレイクを起こさないために・・・ 1つの実行ですね

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